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発達障害と食卓事情

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こだわりとの戦い~食卓編 - フミログ

先日のこちらの記事に対する発達障害特性を持つお子さんの保護者の方の呟きを、いくつか拝見させていただきました。
何と言っても食の事、悩みは深いですね。
私も子供たちが小さかった頃はどうやったら食べてくれるか、こんなに食べなくても大丈夫なのかとずいぶん悩んだものです。
結論から言えば。
少々食べなくても元気なら大丈夫です。育ちます。
鶏ガラの様に細くて心配でしたが、我が子達は思春期で一気に周りに追い付きました。
もう少し詳しく、我が家の食卓についてお話ししたいと思います。


全然食べなかった長男

赤ちゃんの頃の長男は、よく寝てよく飲む、とても育てやすい子でした。
子育て楽勝やん!とか思っていました。
ところが。
立ち上がると同時につたい歩き、あっという間に走り出しました。
走り出したら止まりません。
起きている間はずっと走っています。
食事中でも止まりません。
お行儀悪いので座らせようとあの手この手を尽くしましたが、無駄でした。
発達障害特性の一つ、多動です。
多動も場合によっては食べることに影響してしまう特性なのですね。
ご飯は味見程度に一口二口食べるだけ。
後は牛乳をごくごく飲んでおしまい。
その食べ物に興味があれば食べる事もありましたが、興味の無い物はスルーです。
多動がある場合は、あちこちに興味が飛び散ってしまうので、食事に集中することができません。
おまけにセルフモニタリングも弱いので、自らの空腹に鈍感です。
この子はこれで生きていけるんだろうか、と専門家にも相談しましたが、大丈夫だと思いますよ~というお答えしかもらえませんでした。

長男は現在、高校生になりました。
食は細いままです。
ですが食べることが楽しみで、偏食の無い細マッチョな男に育ちました。
小さい頃に鶏ガラの様な細い体でも、別に問題はありませんでした。


次男の味覚過敏

次男は長男と違って、じーっと座って食べ続ける子でした。
多動もありましたが、摂食に影響はありませんでした。
ですが、謎の偏食がありました。
前の記事でもお話しした、味覚過敏によるものです。
次男は食欲旺盛な子だったので、食べられる物はいくらでも食べました。
食べすぎてしまうこともしばしば。
でも、食べられないものは一口も口にしません。

まだ次男の発達障害の診断がつく前でした。
10年程前の事、私は発達障害という言葉すら知りませんでした。
長男の様に少食でもない、食べるときはたくさん食べる次男の偏食はわがままなのだと思いました。
食べられないわけじゃないでしょう、食べなさい!と言って、無理矢理食べさせようとしました。
次男は食卓でよく泣いていました。

次男は味覚が私達と違います。
後に本人からの聞き取りでわかったのですが、甘味を苦味に、酸味を辛味に感じていたようです。
辛味は痛覚を刺激していたようです。
同じものを口にしても、まったく違う味だと感じていたのです。
中には、痛いと感じてしまう食べ物もあったのです。

ひどいことをしていました。

無知とは恐ろしいものです。
私は自分の価値観だけで、次男に拷問の様な事をしていました。
幼い次男が食卓に座ったまま泣く姿が、今も思い出されます。

中学生になった現在、食べられる物は増えました。
味覚は成長と共に発達するのですね。
甘味が苦味に感じる事は少なくなったようです。
酸味や辛味は、変わらず刺激になってしまうようです。小さい頃より弱い刺激になっているようですが。
次男は給食が食べられないことを気にして、頑張って食べるから!と言います。
頑張らなくていい、食べられるものだけ食べなさい、先生にはお話してるからと私が言っても、食べられないのは悪いことだという認識を変えるのは難しいです。


こだわりとどう付き合うか

我が家にはもう一人、偏食の人が居ます。
旦那ですね。
旦那は前の記事でも書いた様に、強いこだわりから食べられない物がたくさんあります。

美味しいと感じるのに食べられない。
これは損だと思います。
次男の場合は、そもそも美味しいと感じていません。
でも旦那の場合は、こだわりが邪魔をして美味しい物でも食べられないのです。
旦那は自分がこだわりに縛られているのだと気が付いても、こだわることを止められません。
大人になってからでは、こだわりを崩すことは難しいのだと思います。

発達障害特性を持つお子さんで、食に限らず、生活の中で様々なこだわりを持つ子は多いのではないでしょうか。
こだわりを通すことは気持ちの安定に繋がると思います。
ですが大人になってからもこだわりに縛られていては、できることが限られてしまいます。
こだわりを優先すると、選択肢が限られてしまいますね。
ある程度成長して理解力が深まってきたら、こだわりに対する折り合いを付けられるようにお話されてみてはどうかと思います。
こだわりを全て崩さなくていけないとは思いません。本人なりの理由があると思うのです。
本人も周りもここまでならいいか、と譲れる妥協点が見つかると生活しやすくなるのではないかと思います。

食べられない原因がこだわりなら、折り合いをつける事で本人の食の世界が広がるかも知れません。
無理の無いペースでこだわりという縛りをといてあげるといいかも知れません。


食べることを楽しみにして欲しい

何故、私は泣いて嫌がる次男に無理に食べさせようとしたのでしょうか。
栄養をきちんととることは健康な体、健康な生活のための基本です。
誰でもわかっていることですね。
それ以前に、きちんと食べることが正しいという固定観念に縛られていたのではないかと思います。
小さな頃から、出されたものを残さずたくさん食べれば誉められました。
その感覚を次男に押し付けてしまいました。
発達障害があると、考え方が偏ってしまい、食べる事が嫌いになってしまう危険性もあります。
もう少し気が付くのが遅かったら、私は次男から食べる楽しみを奪っていたかも知れません。

食べられない理由が何であるか、それを見極めるのはとても大事なことだと思います。

多動で少食だった長男も、味覚過敏の次男も、今は食べることを楽しみにしてくれています。
食べられることは当たり前ではなく、幸せなことなのだと理解しています。
食べられない理由は様々です。
誰もが楽しく食べられるように。
価値観に縛られて、食べることが苦しくなってしまう方が一人でも減って欲しいと思います。